今昔物語

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その19

今は昔、サッカーのユニフォームがスポーツ用品店では売っていない時代があった。

チームをつくり試合をするとなると、当然ユニフォームが必要。仕方なく、野球のアンダーシャツのようなTシャツに野球の背番号を手縫いで付け、ソックスは厚手のバルキータイプ。現在、若い女の子が履いているルーズソックスの元祖の様なものだった。スパイクは布製のモンブラン。それでもユニフォームを着用した。子供達は本当にうれしそうに喜びを表していた。数少ないそれらは、当然大切に扱い、また買ってもらえた事にも心から感謝していた。
もっと考えられない事があった。ゴールポストやネットもなかったのだ。ゴールポストは太い棒の根本をコンクリートで固め、洗濯物の干場の様に、棒の先をU字にくりぬき、物干し竿を横に渡した。ゴールネットは地元の利を生かして、魚網を使用、一対作る予算はなく、片方だけでまにあわせていた。
道具なんか揃っていなくても練習は出来るし、良い選手も育つ。加藤久氏もこんな中、育っていった卒業生の一人。むしろ 想像力や忍耐力が自然と養われた時代の子供達は幸せだ。全て自分の力になって役に立つもの……。