今昔物語

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その21

今は昔、塩釜FCのはぐれ軍団がいた。

全国的に有名な仙台の暴走続「神風」という軍団。サッカー選手として意志が強く、いくらか上手だった者は、高校のプレーヤーに、しかしついて行けなかったり、色々な事情で続けられなかった者は、仙台新港をバリバリと音をたてて走り続ける仲間に入っていった。当然警察の御世話になることも度々だったが、月日がたつと必ずそれも卒業し少しずつ落ち着いてくる。
ある日、玄関のインターホンを鳴らすものがいて出ていくと、
「こんばんは、俺、今日出てきました」と挨拶に現れたH君。もう悪さはしないと誓い家の中に入らず帰っていった。鑑別所から出てすぐに顔を見せに来てくれたのだ。とても嬉しかったし、もう二度とそんな所に行かないでほしいと願った。
そんなH君も今ではパパ。子供にもサッカーをさせると遊びに来てくれた日、
「パパははちまきに日の丸つけていたけれど、ボクは胸に日の丸をつけるよう頑張れ!」と監督。奥さんがにっこりしながらうなずいていたのがとても印象に残っている。
最近、今まで借りていた東北電力のグラウンドがなくなり、借りられなくなる事態になった。色々なところに借りられないかと連絡を取っていたところ、元暴走族軍団のサッカーチームの代表タケオチャンから電話が入り、自分達が借りているナイターグラウンドを貸してくれるという。
家庭的な関係や、様々な問題を乗り越え他人の痛みが分かる軍団。困っている時はお互い様と快く開けてくれた。