今昔物語

今昔物語一覧へ

その26

今は昔、鉄パイプの嵐が中学生の頭に降って来る出来事があった。

およそ三十五年前、当時はまだ東北にクラブチームの存在が無く、各少年団から上がった子供達は、地域の中学校のサッカー部に進んでいった。塩釜サッカー少年団の小学生は、塩釜一中サッカー部に所属し、中体連の優勝を目指して練習に励んでいた。
ある日曜日、松島中学校と練習試合がありその日の練習を学校から任された小幡監督は、いつもの様に激を飛ばしながら、ゲームの指示をしていた。この日、試験のためレギュラーが四、五人不参加と言う事があり、補欠のメンバーがゲームに参加していた。コンビネーションが思う様にかみ合わないレギュラーが補欠数人に文句を言い始め、試合内容も散々。
ゲーム終了後、監督は全員を一列に並べ、たまたま足下に落ちていた棒を拾い、全員の頭に「スコーン!」「スコーン!」よく見ると、木の棒ではなく、鉄パイプ。やめようと思っても時すでに遅しで、全員を殴り終わっていた。
何で叩かれたのか納得いかないメンバー。「チームメイトに文句を言うより、他にやることがあるだろう。今の皆の実力で、考えながらお互いをカバーすることを考えろ!」言われた補欠メンバーは、嬉しかったのか、悔しかったのか、痛かったのか涙ぼろぼろ。
今の時代に同じ様な事をやったら、新聞沙汰になるかもしれないが、口で言ってもわからない時には、鉄拳制裁も必要かもしれない。痛さを知って、人の痛みを知る事が内面だけでなく、外側からも絶対必要。
叩かれる方は痛いのは当然。でも、叩くこの手と心はもっと痛い、いつも監督は言っている。「当時の親も偉い」