今昔物語
今は昔、塩釜FCの前身、塩釜サッカー少年団に天才の誉れ高い少年がいた。
兄も県下では有名な選手で、我がクラブの黄金時代を築いていた。小、中、高とスムーズにサッカー人生を歩んでいくかと思われたが、高校生になってから、ギターに目覚め、部活に穴をあける様になった。しかし、それまで築いた基礎と持って生まれた天才肌のプレーは、ちょっと練習休んでも落ちる事はなく、更にユース代表候補に選ばれたりした事が、彼の行動に歯止めがかけられなくなっていた。
ユース代表候補の合宿の時にも、彼の個性的な言動や行動は、変わることなく、指導者も手をやいた事は言うまでもない。高校を卒業した彼は、サッカー中心の生活からのがれて、美術関係の学校へ進んだ。アメリカへも渡り、色々な人との出会いがあったが、帰国した時には人間が全く変わっていた。
髪の毛は背中まで長くなり、宇宙の研究に興味を持ち、ちょっと世間ずれした様子に、彼を知っている多くの人々は興味本位で彼の行動を見るようになっていた。数年が過ぎ、彼の事は、少しずつ忘れられて行くようになったが、私達は、相変わらずちょっと変わった彼とつきあっている。私達にとっては息子と同じなのである。
幼いころに社会性を身につけてあげられなかった私達の責任は大きく、彼を通じて学んだ事も沢山ある。他人を教えるってとても重く厳しい。しかし、楽しさもそれ以上である。子供達の言葉や行いに笑い、泣き、苦しみ、一緒に歩みつづける事が出来る嬉しさは私達の特権である。
サッカー、サッカーだけでは世間が狭くなるよ!よーく周りを見て羽ばたかなくちゃ!