過去の遠征
ACミランとの合同合宿
練習編
緑のじゅうたんが敷き詰められた個人所有のレンタルグラウンドが、あちらこちらにあるミラノ郊外。アローナにも何ヶ所か芝生のグラウンドがある。
練習はACミラングラウンドと塩釜FCグラウンドの二ヶ所に分かれて行われた。ミランは専用バスでグラウンドへ、塩釜FCのグラウンドは比較的近いため徒歩で約20分をかけて移動。猛暑の中の移動だけで体力を消耗してしまう。
毎日4、5名が交代でACミランの練習に参加。初めは「日本にはサッカーがあるのか?」「良い子がいるか見てやるよ」と塩釜FCの子供たちをばかにしていたミランの指導者たちも、塩釜FCのレベルの高さに一目おきはじめた。
1日目に、修平(現東北学院大サッカー部主将)、松下(元ジェフ市原、現早稲田大学 英文科)、井上(青山学院大学サッカー部)、ペレ(東北高校サッカー部OB)、ラッキー(GK、東北大学医学部サッカー部)が参加。個人技の素晴らしさに塩釜FCのサッカーを認め始めたミランコーチ。修平に対し「このままいけばセリエAにも入れる」と絶賛し、後の他のメンバーをも「同レベルの力がある」と認めてくれた。
19日の練習試合はBチームと対戦。同年代のチームだ。ミランは機械的に教え込まれ、鍛え抜かれた戦術でやってくる……が……時間が経つと相手のプレーが読めてくる。それに対し塩釜FCはいつもの意外性のあるテクニックでミランを翻弄。1−1で前半を折り返した。後半になると塩釜FCのペースで試合が進められ、審判をしていたミランのコーチは時間を延ばし始めた。「きたねー」と思いながら「ざまーみろ」とにやり。女性陣のビデオ班は初めての体験ながら、決定的瞬間を逃すまいと涙目で迷(?)カメラマン。
23日の試合はAチーム。学年が一つ上でイタリア代表が2人も入っている。負けられない!
監督の「檄」がとぶ。しかし前半は3−0でやられてしまった。どうにも連携が噛み合わない。ハーフタイムには雷が落ちた。後半、我に帰ったイレブンはペースを取り戻した。ペレがPKをとられた。「なんで?」と首をかしげる。がラッキーがナイスセービング。激音と共にボールをはじき思わず「グー!」。ミランの応援に来ていた人たちからも拍手喝采。松下が中盤から上がる。飛び出した訓嘉がナイススルーパス。受けた松下が一点目を放り込む。続いてオフサイドラインをくずし井上が修平からロングパスをうけフリーでシュート。塩釜FCらしい点のとり方だ。イタリア弁が観客スタンドの前から後ろから大きく飛び交う。きっと「素晴らしい」と誉めているのだろう。結果は4−2の惜敗でした。
ミランの選手の個人個人のテクニックは素晴らしいし、練習の随所で見受けられるが、試合となるとそれが生かされていないような気がする。ミランの試合パターンがあり、型にはめられた組織立ったプレーで展開されている。
毎日、塩釜FCグラウンドでは午後3時からミランのコーチから指導を受ける。特にフィジカルトレーニング、キーパートレーニングの内容には目を見張るものがある。川辺の足(生まれつき両足首が以上に細く、障害を持つ)にいたわりの声をかけられ感謝する事しきり。
ミランはとにかく走る(新チームで身体づくりから入っているらしい)。計算されたトレーニングにはミランの伝統を感じるが、ミランの選手の表情の暗さを見るにつけ「こいつらサッカーやっておもしろいのかな?」と疑問を持ってしまう。選ばれた自信といつ首になるかわからないという不安が常に入り交じりプレーを続けているのではないだろうか。
日本のサッカーを下に見ていたミランのコーチ陣だが、塩釜FCの出来のよさにびっくり仰天。対する態度も日に日に変わってきた。トレーニングメニューの豊富さにビデオ撮りや記録メモに一苦労。ひとつでも見逃すまいとあっち追いかけ、こっち追いかけ、暑さも手伝ってダウン寸前。
ホテルのオーナー、フランコさんは塩釜びいき。ミランのサッカーは嫌いだという。「塩釜FCのような自分で考え個人技を生かすようなサッカーをするチームが増えてほしい。そして小幡さんのような指導者が世界各地にいるとサッカーのレベルはもっと上がる。来年は、スポンサーを探すのでまた来てほしい」と誉められ何かくすぐったい。お世辞であってもとてもうれしい。
塩釜FC24名、思う存分、力が発揮でき日本のサッカーを認めてもらった功績は大きい。本当によく頑張った。